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November 27, 2006

ルナシー

Lunacy

  シュヴァンクマイエルの新作ということでかなり身構えて観に出かけた。
 「悦楽共犯者」にしても「オテサーネク」にしても、彼の作品には独特の
 パワーがあり、油断しているとその圧倒的な存在感に打ちのめされてしまう。
 よくわからないうちに気圧されて映画が終わってしまい、後に残るのは
 どうあがこうと排泄し得ない、だがドロドロとして掴みきれず、形を持たない
 何かだけだったりするのだ。負けないよう気合いを入れて鑑賞。
  今回のルナシーはこれまでのシュヴァンクマイエル作品に比べてわかり
 やすいのではないか、というのが第一印象だった。この世の人間、いや
 この世の中のすべてが程度の差こそあれどこかしら狂っているのではないか
 ということだったり、狂気と正気の境目は実に曖昧で恣意的であるという
 ことだったり。ストーリーも最後のオチもわかりやすく腑に落ちるもので、
 ちょっと意外だったな。それだけ私が狂気により近い存在になっているの
 かもしれないが。
  だがシーンシーンの合間にはさまれるアニメーションは相変わらず
 ものすごいイメージの奔流だった。石垣の漆喰部分がすべて肉にかわり
 その肉が脈動する画は「想像力がある限り、世界は完成しない」と言った
 シュヴァンクマイエルの言を見事に現すものだった。
  愛妻であり製作上の重要なパートナーであったエヴァさんの早すぎる
 死によってシュヴァンクマイエルの作品がどう変わっていくのか。
 不安でもあり楽しみでもある、というのは彼の作品に対する者として
 正しすぎる態度だと思うのだがどうだろう?。
  85点。観る映画ではなく体験する映画なのだ。

 「ルナシー」LUNACY(原題Sileni)
  監督・脚本 ヤン・シュヴァンクマイエル
  キャスト パヴェル・リシュカ ヤン・トシースカ
       アンナ・ガイスレロヴァー ヤロスラフ・ドゥシェク 他

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