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January 28, 2005

ネオ・ファンタジア

neof

  それはまだ私が学生の頃。アニメーション同好会にいた者にとってディズニーの
 「ファンタジア」はいわゆる幻の作品であった。まだβとVHSが覇権を争っていた
 時代、当然今ほどAVソフトは充実しているわけもなく、地上波で放送されることは
 まず無いだろう、クラシックにアニメーションをつけた映画「ファンタジア」は
 噂と静止画だけでしか触れることのできない存在だったのだ。サークルの仲間で
 お金を出し合いフィルムを借り、学園祭で上映会をして大赤字になったのが懐かしく
 思い出される。そこまでして見たい映画だったのだ。今ではDVDやビデオが充実
 して、当時のような幸せな枯渇感を味わうことは出来ないだろう。
  そして当然同じようにクラシックにアニメをつけたこの「ネオ・ファンタジア」も
 止まっている猫の絵しか見たことのない幻の映画だったのだ。それをこうやって
 劇場で観ることの出来る幸せ。噛みしめながらの鑑賞となった。
  タイトルからもわかる通り、この映画はディズニーの「ファンタジア」のパロディ
 いや、イタリアアニメ界の巨匠、ボツェットによるファンタジアへの返歌と言った
 方がいいかもしれない。確かに本家のファンタジアに比べれば拙い所もあるし
 ボリューム感も薄い。だが本家にはないイタリア独特の雰囲気、世界を斜めから
 見ているような「粋」がある。本家がファミリー向けの健全な娯楽大作だとしたら
 こちらはわかる大人だけに向けて作られたインディー作品の趣。もちろん本家の
 ファンタジアがなければあり得ない作品だし、その比較の内に語られる映画では
 あるのだが、それだけではない素晴らしい作品であることも確かなのだ。
  特に素晴らしいのは誰もが認めると思うが、進化をモチーフにしたラヴェルの
 「ボレロ」につけられたアニメーションパートだ。これぞまさしくアニメの醍醐味。
 どこかの星の上の宇宙船と宇宙船から投げられたコーラの瓶というファースト
 シーンもSFのマインドを刺激してやまない素晴らしいショットである上に
 そこから繰り広げられるメタモルフォーゼはアメリカや日本のアニメでは描くこと
 ができないだろう独特の匂いに満ちあふれ、一度観た者の魂を掴んで離さないで
 あろうこと間違いない。このパートを観るためだけにお金を払っても損はないと
 思う。
  本来なら付け足しであろうはずの実写パートもなかなかいい出来で、あの
 フェリーニが監督したのではないかというデマまでまことしやかに人の口にのぼる
 ほどだったらしい。クラシック演奏を指揮したのはカラヤンで、こちらは正真正銘。
 音楽も見どころ、いや聴きどころのひとつである。
  この際個人的な思い入れもたっぷり入れて90点。ここまで書いておいて悪い
 気もするのだが、東京恵比寿の東京都写真美術館ホールでのロードショーは
 今日が最終日であった。
 
  「ネオ・ファンタジア」ALLEGRO NON TROPPO
   監督 ブルーノ・ボツェット
   音楽・指揮 ヘルベルト・フォン・カラヤン
   演奏 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

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